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みんなが「ホントの仕事」に従事すれば、日本は良くなるし、世界にもいいことあるよ、たぶん。



キミは何もわかっちゃいないが、すべてを「知っている」

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リリカルで、叙情的で、凛としてて、静謐で、清々しい。

 

アレンジも音の組み立ても、立体感がありながらもわざとらしくなく、オーガニックに響く。

 

この頃(1971年)のホール&オーツこそ、音楽。キミとぼくの境目を溶かす、本当のコミュニケーション。岡田史子のマンガのように刺さるこの滋味。人は単に人であるのでない。人は連鎖の結束点だ。人がいて人に魅了し魅了される、そのこと以外に、この世に素晴らしいものなんて何もない。分かってるだろ。

 

かくも包容力のある、このような優れた音は、相互の浸潤こそが真理への道程という直観を支える、そんなか細い糸。豊かにしなる蜘蛛の糸。

 

キミは何もわかっちゃいないが、すべてを「知っている」。ぼくはキミに降参だ。

 

<了>

父にガンが発覚した。

去る11月13日月曜朝、いつも通りの朝、快晴の朝だった。

 

しかし我が家だけは、突然の異常事態に見舞われた。同居している父が突然血尿を訴えたのだ。こんなことはいままでなかった。すぐさま近所の総合病院に駆け込んだ。

 

父は日ごろから健康に気を遣いすぎるほど気を遣う人で、76歳11か月の現在まで、健診でひとつも引っかかったことのない、かなりの健康体であった。血尿以外の自覚異常もない。

 

泌尿科に通され仔細に調べるも、尿への血液混入はごくごく微量。他の検査要素も正常値。尿の色は赤色というよりは紅茶色で、これは何か違う疾患かも知れぬと、そのまま内臓系異常の線で検査続行。

 

まず胃の内部出血を疑い、すぐさま胃カメラを飲むも、胃の内部は異常なし。それどころか父の年齢にしては、たいへんキレイな胃の内部だという。

 

ではでは、ということで今度はMRIだかCTだかを使った腹部撮影を敢行。胃カメラ同様に、機材のスケジュールを急遽空けてもらい、すぐ撮ってすぐ診断。

 

医者の顔が曇る。すい臓の上(頭部というらしい)が少し腫れてますね、との所見があった。

 

念のため腫瘍マーカーという、ガンの指標となる値を計測する。するとマーカー「CA19-9」の値は4,000を超えた。正常値はヒト桁台である。

 

つまりそれは、癌の発覚だった

 

発生部位がすい臓頭部というのが運の尽きである。

 

すい臓頭部は体の中央にあり、周辺の臓器や血管がひしめき合い、開腹手術が不能な部位である。ガンの中でも一番致死率の高い進行性すい臓がんに、健康な父が罹患してしまった。血尿の原因は、すい臓から肝臓に出てる肝管がガンによって押しつぶされ、胆汁の流れが滞ってるための現象だという。そのままだと全身に黄疸があらわれ、がんよりも先に、腎不全で参ってしまうという。

 

落胆して帰宅した父の顔色は、その日の夜からさっそく黄色くなっていった。悪魔からのいざないのごとくに。

 

いきなりカウントダウンの音が聞こえたような気がした。

 

(続く)

【書評】「ひとまず、信じない―情報氾濫時代の生き方」 押井守(著)

 

ひとまず、信じない - 情報氾濫時代の生き方 (中公新書ラクレ)

ひとまず、信じない - 情報氾濫時代の生き方 (中公新書ラクレ)

 

 

セカイがつまらないと思ってるあなたに向けて。

対談本の出版が最近続いたが、久しぶりの押井守単書が登場した。いままでの筆者の主張が、仕事や政治、幸福と言った切り口から入って、平易な読みやすい文体でつづられている。たいへん良い内容で、いろんなひとに薦めたい。

サクッと読めるが奥は深い。過去に読んだなにかの焼き直しでもないので、新鮮味を失っていない。よく多数の著書を出せるものだと、感心してしまうほどだ。著述家として一流である。映画監督の才能の延長に思える。

内容は前半は老若男女に向けた、ほとんど究極の人間指南書。
甘ちょろいものや、おためごかしに惑わされない芯を教える。
後半は絵空事としての映画の中に魂を盛り込まなければ、映画監督はテーマを持てない。テーマがなけりゃ仕事じゃないという、これまた「芯」の教えである。

書名の「ひとまず、信じない」は、本書のどこにも直接記述がない。
編集がつけた書名なのかもしれないが、これでいい。何から何まで言わなくていい。

私はよく書評を書くが、書評とは本の内容を自分なりに言い換えることだと思ってる。
よって本書の内容を私なりに言えば、以下のようになる。

セカイがつまらないと思ってる人は多い。
でも「つまらないこと」の検証を怠ってるなら、つまらない対象はつまらないままだ。
「つまらないこと」の方からは干渉してこないから、そのことに、自分で気づいてあげないといけないのだ。

となる。とにかくこの本はいい。読めば分かる。
 
<了>