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みんなが「ホントの仕事」に従事すれば、日本は良くなるし、世界にもいいことあるよ、たぶん。



音楽でできること―Live From Daryl's House-「Say It Isn't So」


Live From Daryl's House- Say It Isn't So

 

すべての音楽は特有の温度圏を持つ。プロだろうがアマだろうが、自作だろうがカバーだろうがヒットしようがしまいが、曲はチューンは全部、個別の体温を有している。曲は人そのものであり、同時にメディア(媒介物)だから、そうなるのも当然だ。

 

ロックだと熱い方面の曲が多いが、「温度」を伝えることは、音楽の最も重要なメッセージのように思える。むしろ音楽は、温度(いいかえればヴァイヴレーション)の伝達しかできないといってもいい。それがゆえに音楽は偉大だ。著作権などは「温度」の前では単に言い訳に後退する。アガるテンションの前で制度は無意味だ。

 

リンクに貼ったこの「Say it isn't so」は80年代中期の洋楽ヒット曲だが、実は世の中の曲にはめったに聞かれない、微温帯の音である。そしてひんやりとクールな感触が土台になってはいるが、ヴォーカルや演奏次第でホットに変容する、自在な曲でもある。


ソングライターなら嫉妬を覚えるようなニュアンスを、元から秘めた曲だと思う。休符やミュート、音が絶える瞬間にすべてが凍り付いて定位される。音の宇宙はなにもないところにこそある。人生と同じである。

 

メガネもヒゲもハットも、すべてがスタイリッシュにキマったゲスト、ブッチ・ウォーカーの、聞かせどころをよくわきまえたパフォーマンスのおかげで、この曲の持つ、それこそ70年代後期のスティーリーダンくらいでしかお耳にかかれない、特上の微温圏がよく堪能できる名演である。

 

明日を淡々と、粛々とこなすのに申し分のない、微温系。


世の中に音楽はあふれてるが、こういうポップに覚醒したものは、ほとんどない。ぜひ聞いてほしい。

 

<了>