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みんなが「ホントの仕事」に従事すれば、日本は良くなるし、世界にもいいことあるよ、たぶん。



進歩は崖をのぼるがごとく。

たとえば犬が、家のスリッパを噛んで飼い主に怒られる。すると彼はすまなそうな目をして顔をそむける。悪さをした人間の子供と同じ反応である。かわいらしく、笑ってしまう。

 

ここにおいては、動物と人間の差はほとんどゼロである。水平地点である。

 

犬の側からすれば「いま怒られてる主観、叱られている理由も分かってる主観」を客体化できる知性が、ほんの0.00001ミリでも脳内に芽生えたら、そこが犬の種が進歩する足掛かりポイントである。水平線にできた、ほんの小さな、見過ごしてしまいそうな突起が、進化の起点である。

 

その足掛かりポイントは、気づかなければ過ぎてしまう。その突起を何度も呼び出すとか、その上を何度も行き来するとかして、まず突起の存在に気づき、その足掛かりにロッククライミングのようにいくども幾度も手をかけ爪を立て、足でも踏みつけて、ようやく自分の身が持ち上がって崖の上に顏が出る。

 

これが突然変異である。これの持続が進化である。

 

ニンゲンは、母の胎内で受精した時から、地球の全動植物の進化を、ひととおり全部やる。海(羊水)から始まり、細胞分裂から身体の獲得から、魂の原型づくりまで、全工程を10か月くらいで整えてしまう。産まれてからも赤ん坊はギャンギャン泣く、二本足で立とうとする、歯が生える、片言をしゃべりだす…etcと、幼児は暴力的ともいえる驚異の連続を、いともたやすくやってのける。

 

つまり赤ちゃんは、生物の突然変異の道筋をぜんぶテンプレート化し、そのロードマップに沿って勝手に自動的に進化を行うのである。その際のセルモーターは母から伸びた管1本であり、あとはほぼ自家発電でまかなうのである。人の世では、子供がいっとう偉いのである。そして動物も植物も、みな同じ道程をたどって成長する。ロードマップの方向性(動態なのか静態なのかなど)や、進路の途切れる部分が、それぞれの生体で違うだけだ。植物の生長点(茎の伸びゆく先端)ほど、美しく尊くみずみずしいものはこの世にない。

 

ほれ、進化などいたるところに発見できるではないか。学者でなくとも専門家でなくとも、見る気があればこの世には、神秘でないものなどない。そこ以外に、いったいどこを見るのか。

 

<了>