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みんなが「ホントの仕事」に従事すれば、日本は良くなるし、世界にもいいことあるよ、たぶん。



本当の仕事人との邂逅(かいこう)

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*ラーメン作った(本文と関係アリ)

 

10年ぶりに会う友人と、先日飲んだ。ラーメン店経営の男である。年は41。
彼の作る、きわめて滋味深い坦坦麺に12~3年ほど前魅了され、友人になった。


経営人にもいろいろいるが、彼は味職人であり、雇われ社長職の人ではない。
創業社長であるが、かれは店主という肩書きを好み、多少なりとも嫌味の伴う「社長」の語感を嫌う。


いわゆるイケメンではないが(失礼!)、イケてる麺職人である。
その瞳は澄んでおり、人当たりはマイルドで誠実そのもの。
誰とも平易に打ち解ける柔軟性も持ち合わせ、人の悪口をいわない。


中卒で働きに出て、自分をたたき上げ、いまや自分の店を持ち、大繁盛させ、しかも守りには入らず、他店研究にも、新味の開発にも、いまだに熱心である。
億まであと一歩という、強固な稼ぐ力を養成し、それを安定させる力も身に着けた。

彼は以前言った「ラーメンなぞ、たかが料理である。自分の領域はラーメン道に殉ずることではない」と。
ねじり鉢巻きに腕組み、右翼的で偉そうな威圧感を打ち出すラーメン業界に違和感を表明し、自分は裏方に徹し、顧客の味の評価のみに焦点をあて、客の支持を得てきた。
流してやる仕事はひとつもなく、仕込みにも手を抜かないし、長時間労働もいとわない。餃子は具から作り込み、なんと100%手握りである。ラー油ひとつとっても既製品を好まずこだわって手作りし、すべてのラーメンには下皿を付け、店内のクリンリネスは徹底している。そしてすべての料理の味に間違いがなく、かつ安定している。店休日はない。


その結果としての大繁盛であって、これが筋を通すということである。仕事でそれを体現し続けてきた真の仕事人、ホンモノの男。店の立地は裏通りにあり、決して恵まれているとはいえないが、店の本丸(=味、接客など)はホンモノだからそうした多少の不利は克服できるし、しかも永続性があって廃れない。


自分の外側の価値観には惑わされず、外食業界のトレンド変遷にも、食べログの評価上げにも、見向きもしない。テレビなどのマスメディアに取材を申し込まれても、それにうかうかとは乗らないし、本人もSNSに関しては、ぶっきらぼうな態度を崩さない。というかそんなものに関心を向けるヒマなどない。


つまり、自分をむやみに売り込む方向の営業は、最小限なのである。かといって自分を素直に出すことが、何かのエクスキューズになってしまう場合もあるが、彼は自分の味や店といった仕事の現場を触媒として自分を出しているので、そのような愚に陥ることはない。そしてマーケティングやビジネスコミュニケーションといった副流の知識は参考程度にとどめる、そんな謙虚さ、賢明さがある。


どんな党派性にも露ほども染まらず、安易に模倣にも頼らず、自画自賛にも陥らず、自らを他の何者でもない、自分色に染め上げてきた。黙々と、たゆまず、毎日。
そうやって自分を規定し、しかるのちには自分にうるしを塗るように自己刷新し、過去の自分を乗り越え続けてきた男。姑息さもうかつさも半端さもなく、ブレない信念、芯念を持つ店主。それでいて、いやこんなスタンスで生きてるからこそ、誰に対しても偉ぶらない。


これぞ男の中の男、真のハードボイルドであって、10年ぶりに会ってもこのゆるぎない姿勢はみじんも変わっていなかった。6歳も下なのに質実偉大な人物であると再確認した次第。これからもいくらでも成功してほしいと心底思う。


いつも引きこもってるぼくだが、たまに夜、人と会って酒を飲む。
それがこんな男との会話なら、痛飲したとて誰が責められよう。
ここのところ仕事で気の滅入ることの多かった自分に、大いなる勇気となった。
何度も握手した手のぬくもりは、まだ残っている。

 

<了>